『大相撲知れば知るほど』~「相撲」編集部編著

昭和27年創刊の専門誌『相撲』の編集部が手掛けた入門書。相撲の基礎知識や関取衆のプロフィールが多彩な写真とともに紹介されています。相撲初心者向けにわかりやすく作られたものですが、実はおすもうのことはひと通りご存知の方々にもおすすめしたい一冊なんです。そのわけは、ほかでは見られない力士のお茶目な一面がさく裂したグラビアページにあります。うっとりする艶やかな場所入りカットやクスッと笑顔がこぼれるお茶目カットなど、愛蔵したくなるオフショットが満載。
今回は、これらの写真のセレクトはもちろん、編集・企画から原稿までを担当された『相撲』編集部の十枝慶二さんにお話を伺いました。

十枝慶二さん(とえだ・けいじ)

『大相撲知れば知るほど』と『相撲』3月号を手に。『相撲』3月号では、連載「家族が語る関取『はじめて物語』阿炎関」の記事などを担当。

―まずはこの本を作ることになった経緯から教えていただけますでしょうか。
弊社で書籍を担当している出版局のほうから、相撲の入門書を出したいというので、「相撲」編集部に話がきまして、私が担当することになりました。

―第一章から順に見どころや制作エピソードをお聞きしたいのですが、まず、第一章は「大相撲歳時記」ということで、1月~12月の相撲界での出来事が紹介されていますね。写真がメインなのでひと目で季節感もわかってとても見やすい!
このページのヒントになったのは、子どものころに読んでいた『相撲歳時記』という本なんです。昭和55年に出たもので、私はこの本が大好きでもう何度も何度も読んでいたんですが、この本は文字だけだったので、これを写真入りでやりたいとずっと思っていたんです。

―とくに見どころは?

1月の明治神宮土俵入りは新聞や雑誌でもよく見る写真ですが、それは結構横綱に寄ったトリミングなんです。ここまで全体が映っている写真って実はあんまりないんですよ。親方衆がずらっと並んでいるのが壮観でしょ。

5月もおすすめページです。五月場所の場所入りの写真を集めたんですが、この本を作る少し前に『相撲』で五月場所の場所入り写真特集をやったら好評で。相撲好きで有名な山根千佳さんもブログで「一番好きなページ」として紹介してくださったりしたんです。

―青い空に、着物の柄が映えてきれいですよね。冬だと外套とか着ちゃったりしますから、五月は力士の着物姿を堪能するにはもってこいかもしれません。

そうなんです。あと、もう1つ、10月もいいんですよ。毎年「全日本力士選士権大会」があるので、その写真がメインですが、この大会では土俵脇に力士がズラリと並びます。これがなかなか見ものなんです。

―ほんとだ。普通の本場所ではありえない絵ですから新鮮ですね。では、第2章「大相撲ものしり帖」にいきましょう。
ここでは、決まり手のところをぜひ見てほしいです。実際の場所での写真を使って決まり手を紹介しているのがポイントです。これも、子どものころに読んでいたものがヒントになっていて、昭和55年に『大相撲』(読売新聞)の臨時増刊として出版された『古今大相撲事典』に、場所中の写真で決まり手が書いてあるページがあって、残念ながら1色刷だったんですよ。だから、ずっとこれをカラーでやりたいって思っていて、この本で実現させました。

十枝さんが子供のころから何度も何度も読んで、今も大事に持っている『古今大相撲事典』(読売新聞「大相撲」臨時増刊)と『相撲歳時記』(高橋義孝監修、北出清五郎・水野尚文編、TBSブリタニカ)。

―この本では十枝さんの子ども時代の思いがけっこう投影されているんですね。

そうですね~。

―おすもう好きになるきっかけはなんだったんですか?

多分、家族が見てたので見るようになったと思うんですが……。

―ご贔屓の力士は?

輪島です。毎日仏壇にお線香をあげながら、輪島が勝ちますようにって、祈ってましたよ(笑)。

―国技館にも見に行かれてたんですか?

はい。初めて行ったのは8歳のとき。まだ蔵前国技館の時代です。昭和50年秋場所14日目でした。

―すごい! 鮮明に覚えておられるんですね。

よく覚えています。大関だった貴ノ花が優勝した場所です。

―国技館はその後もかよわれていたんですか?

はい。当時も子どもの当日券自由席がありましたから1人で行ってました。昔は結構ゆるくて、仕度部屋の近くまで行けて、おすもうさんに触ったりしてましたよ。教習所の土俵が外にあって、そこに上がったり。ウロウロしてたらおすもうさんがアイスキャンディくれたり。楽しかったなぁ。

―ご自身で相撲をやろうと思われたことは?

実は、大学時代は4年間相撲部でした。

―ええ!角界入りは考えられなかったんですか?

ちょっと難しかったです(笑)。

―おすもうさんじゃなくても行司さんとか床山さんとかの道っていうのはなかったんですか?

そうですね。小学校の卒業文集では、なりたい職業は「力士」と書いてましたよ。それがダメだったら相撲実況のアナウンサーになりたいって思ってました。さっきお話した『相撲歳時記』の著者が北出清五郎さんというNHKのアナウンサーの方だったので、その影響もあって。

―雑誌の編集者っていうのはまったく頭になかったんでしょうか?

高校から大学にかけて考えるようになりましたね。それで、大学卒業後にベースボール・マガジン社に入って、念願かなって『相撲』編集部に配属されました。

―初めての取材などは覚えておられますか?

平成2年の夏場所で、貴花田が新入幕の場所とあってにぎやかなときでした。

―入社以来ずっと『相撲』一筋ですか?

実は、編集長まで務めたのですが、一度退社して相撲と関係ない仕事をしていた時期もあるんです。でも、現在はフリーとして『相撲』編集部に籍を置いて、こちらの仕事をメインでやっています。なので、この会社ではずっと相撲ですね。

―結構長いですよね?

はい。ほかの編集部員もけっこう長いです。

―新聞記者さんなんかだと、せっかく力士と信頼関係ができたと思ったら異動になってしまうなんてケースも多いと聞きますが、その点、雑誌だと長く付き合えてよいですね?

ええ。そのおかげで、第3章の「人気力士オフショット名鑑」にあるような貴重なショットも撮れるのかなと思います。

―そうそう。今日一番聞きたかったのがここなんです!この写真のセレクトたまりませんねっ!

そう言っていただけるとうれしいです。『相撲』では膨大な写真を撮りますが、本誌で使いたいけど使えない写真とか、大きく使いたいのに小さくでしか掲載できないとか、カラーで載せたいのにモノクロになってしまったとかいうのがいっぱいあるんです。日々写真を見ていて、どういう写真がどこにあるかは頭に入っていたので、セレクトはそれほど大変ではなかったです。実際に揃えるのは大変でしたけど(笑)。

―逸ノ城関がカエルの遊具にまたがってる写真とかいいですよねぇ~。

記者とかカメラマンがずっと普段から付いているので、こんな素の姿を見せてくれるんじゃないかなと思います。

―臥牙丸関がフォークリフトに乗ってるのも不思議なシチュエーションでいいです。

巡業だと、こういう意外な場面に出くわすこともけっこうあるんですよ。それを皆さんに少しでものぞいてもらえたらなと思います。

―でも、きっとまだまだ埋もれているお宝写真があるんですよね?

まだまだありますね。

―第2弾はないんですか?

予定はないですね……。でも、毎年9月に出ている大判サイズの『大相撲力士名鑑 改訂版』にはオフショットページがあるので、そこで使ったり、大相撲カードでもオフショットカードをやったりしているので、そちらもぜひ見てみてください。

―わかりました。では、最後は第4章の「大相撲を楽しむための徹底ガイド」。チケットの買い方など、おすもうを見に行くための基礎知識がわかりやすく紹介されていますね。

初めての人でもわかりやすいようにしてみました。あと、地方場所の宿舎も載ってるんですよ。

―これ、意外と便利です。「相撲」本誌の話になってしまいますが、こちらでも宿舎一覧が掲載されていますよね。この端っこにふとん屋さんの電話番号が書いてあるのは何なのでしょうか?

各部屋が地方場所用にふとんを借りるためです。

―読者には全く関係ないですよね?

ですね。これは、相撲協会が地方場所のときに各部屋に配布するものに一部手を入れて載せているんですよ。で、ふとんを借りるときはパッと電話できるようにってことで。

―そうなんですね。本当にいろんな意味で、相撲って知れば知るほど!です。

私たちおすもうさん編集部では、『裏まで楽しむ!大相撲』を制作するにあたって、あらゆる相撲関連図書を集め、参考にさせていただきましたが、なかでもこの本は私たちの大のお気に入りでした。ぜひ、みなさんも一度手に取ってみてください!

『大相撲知れば知るほど』
「相撲」編集部編著
(ベースボール・マガジン社)
1,500円(+税)

大相撲知れば知るほど

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(2018/3/14 17:44時点)

ベースボール・マガジン社では、『大相撲知れば知るほど』のほか、月刊誌『相撲』はじめ魅力的な相撲本を多く出版されています。今回は『大相撲知れば知るほど』に加えて、この2月に復刻版が出たばかりの『新版 横綱の品格』(双葉山・時津風定次著)、そして相撲の見方が変わる『世界初の相撲の技術の教科書』(桑森真介著)の2冊も併せてご紹介します!

没後50年にあたり名著が復刊

未だ破られていない69連勝という連勝記録を打ち立て、〝相撲の神様〟とも称賛される第35代横綱・双葉山は、その相撲の強さのみならず、横綱としての品格という点でも名横綱といわれます。
本書は、双葉山本人がその生い立ちをふり返り、自らが求めてきた相撲道とは、横綱とは、人間とは、についてとても誠実な言葉で綴ったもの。謙虚で潔く、向上心を忘れないその生き様に惚れ惚れとします。また最後に紹介されている相撲界以外の交友関係も興味深く、力士としてだけでなく人間として、一流の人達からいかに愛されていたかがわかります。巻末の第48代横綱・大鵬幸喜氏による「本書に寄せて」も必読!

双葉山(時津風定次) ふたばやま(ときつかぜ・さだじ)
第35代横綱。昭和2年初土俵、同6年に新十両、7年に新入幕を果たす。11年に初優勝し、場所後に大関昇進、翌年に横綱に。11年一月場所から14年一月場所まで69連勝を記録。昭和20年引退、年寄・時津風を襲名。昭和43年、56歳で死去。

『新版 横綱の品格』双葉山(時津風定次)著(ベースボール・マガジン社) 1,600円(+税)

*1956年に黎明書房より発行された『相撲求道録』を復刻した『復刻版 相撲求道録』(1979年、ベースボール・マガジン社)からさらに加筆・改筆した新書『横綱の品格』(2008年、ベースボール・マガジン社)を増補、再編集したもの。

新版 横綱の品格

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相撲の「なんでそうなるの?」を解決してくれる!

一見「相撲をやる人のための本じゃないの?」と思いがちな本書、実は相撲観戦にも役立つ一冊。サブタイトルは「決まり手をみるな!前さばきを見よ!」ん?よくわからない? 野球で例えて言うなら、バッターが打った球がレフトに飛んだか、ライトに飛んだか、これがいわば決まり手。でも大事なのはどっちに飛んだかではなく、どう打ったか。どう打ったかが前さばきというわけ。ということで、この本では、相撲の理論や技術をたくさんの写真&DVDでがっぷりわかりやすく解説してくれているのです。
なんですり足で動くのか、どうして四股を踏むのか、テッポウやぶつかり稽古は何の意味があるのか、頭で当たって痛くないのか?などなど、相撲の「なんでそうなの?」の答えがここに! 相撲の見方が変わる!わかる!一冊です。

桑森真介 くわもり・しんすけ
明治大学教授・医学博士。明治大学相撲部在籍中に全国学生相撲選手権大会個人2位、団体優勝の経歴をもつ。

『相撲観戦が10倍楽しくなる!! 世界初の相撲の技術の教科書』桑森真介著(ベースボール・マガジン社)
*DVD付き 1,800円(+税)

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