第1回 故郷が遠い力士は出世する説

おすもうのことなら何でも知ってる知恵袋、伊勢ノ海部屋マネジャー浅坂さんの連載がスタート!
思わず「へぇ~」とうなってしまう、すもうの雑学や豆知識を聞いちゃいます。

9月某日、都内某所のレトロな喫茶店にて浅坂マネジャーと待ち合わせをしていたおすもうさん編集部。お昼前に浅坂さんがやってきました

――こんにちは。お忙しいなかありがとうございます!

どうもどうも。今日はどんな話をすればいいんですかね。力士の出身地でしたっけ?

――そうです。五月場所のときの「相撲塾」で話していらしたこと。出身地が遠い力士のほうが出世するとか、そのあたり、もうちょっと伺いたいです。

はいはい。日本には47都道府県ありますが、横綱の出身県で一番多いのはどこでしょう?

――北海道!

正解!

――相撲塾でも話していました。

北海道出身の横綱は8人います。千代の山(41代)、吉葉山(43代)、大鵬(48代)、北の富士(52代)、北の湖(55代)、千代の富士(58代)、北勝海(61代)、大乃国(62代)ね。敬称略だけど。

――そうそうたる方たちですね!

すごいですよね。大乃国さん以来、横綱が出ていないのは寂しいもんです。

――浅坂さんも北海道ご出身なんですよね!

札幌出身です。※浅坂さんは元力士。四股名は雪光山。うちの部屋の師匠(伊勢ノ海親方、元北勝鬨)も北海道ですよ。帯広ね。

――北海道出身の力士、昔は多かったですよね。

今は旭大星関と矢後関かな。旭大星関は旭川で北の富士さんと同じ、矢後関は芽室町出身で大乃国さんと同じね。

――どうして北海道から横綱が一番多く出ているのでしょうか。

やっぱり遠いからだと思いますよ。昔は、今ほど移動手段が便利じゃないですからね。相撲が嫌になっても、帰る術がないんです。北海道で「力士になる」って決めて東京に出るときには、家族や親戚、近所の人も集まって「頑張って行ってこい!」って盛大に送り出される。そしたら、ちょっと嫌になったぐらいじゃ恥ずかしくて帰れないです。

――15歳で東京に出てきたら、飛行機も簡単に乗れないですしね。

お金もないから逃げられない。たくさん稽古して、強くなるしかなかったんです。

――帰れない覚悟があったからこそ、強くなったんですね。

今、モンゴル出身の力士が強いのも、同じ理由だと思いますよ。ちなみに横綱輩出数2位は青森。青森出身の横綱は、鏡里(42代)、初代・若乃花(45代)、栃ノ海(49代)、2代・若乃花(56代)、隆の里(59代)、あ、稀勢の里関の師匠ですね。おしん横綱。それから旭富士(63代)、今の伊勢ケ濱親方。6人ですね。

――おお。今は新幹線がありますが、昔は遠かったですね。

北海道や青森は偉大な力士の出身地ですから、相撲熱が盛り上がって競技人口も増えますよね。自然といい人材が出てくるし、一旗揚げよう!って思う人も多かったんだと思います。

――九州も東京からは遠いですが、北国が多いんですね。雪国で足腰が鍛えられたというのもあるんですかね。

あるかもしれませんね。

浅坂さんのあれもこれもの楽しいお話は、これからも続きます。お楽しみに!

浅坂直人(あささか・なおと)

伊勢ノ海部屋マネジャー。北海道札幌市中央区出身。元三段目・雪光山(昭和55年五月場所初土俵、平成4年九月場所引退)。相撲関連書籍、資料を5000以上所有。相撲のことならなんでも知っている生き字引的存在。相撲のみならず、洋楽にも造詣が深い。好きなアーティストはジェフ・ベック、エリック・クラプトン、アニマルズなど。

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