『稽古場物語』出版記念トークショー・レポート③

「おすもうさん」では、“おすもうびと”のコーナーでのインタビューや、主宰イベントの司会などでご登場いただいている、日刊スポーツ新聞社の佐々木一郎さん。今年1月に初の著書『稽古場物語』が発売になりました。それを記念して開催されたトークショーの模様を、3回に渡ってお届けします。第3弾では、『稽古場物語』書籍化にあたって追加されたコンテンツ「稽古見学ガイド」について、そしてゲストの西岩親方が育った旧鳴戸部屋の稽古場のお話をお届けします!

若い力士が泥だらけで稽古するさまはぜひ見てもらいたい!

佐々木:この本を作るにあたって、一番最後に「稽古場見学ガイド」をつけさせていただきました。各相撲部屋が稽古を公開してるかどうかというものなのですが、これを書くにあたっては非常に悩んだんです。ちなみに稽古見学されたことがある方はいらっしゃいますか?

(けっこう手があがる)

あ、けっこういらっしゃいますね。

西岩:西岩部屋の稽古に来られたことがある方は?

佐々木:おぉ、けっこういらっしゃいますね。稽古見学というと、ちょっと敷居が高くて、どうしたらいいか分からない……というものを自分で乗り越えて見に行くというのが喜びでもあると思いますから、私が本で情報をつまびらかにするのはどうかと思いましたし、これでたくさんの人が押しかけて相撲部屋に迷惑がかかっても本意ではありませんし。でも、稽古を見るというのはとても刺激的でぜひ見に行ってもらいたいと思って、ガイド的に載せてみました。西岩部屋では稽古見学OKにされてますね?

西岩:はい。若い力士たちがこんなに泥だらけになって、汗をかいて、目標にむかってがんばっているという姿を見てもらいたいと思って。でも、いろんな問題もあって、非常に難しいとも感じています。

佐々木:マナーなどの問題ですか?

西岩:私の部屋は浅草寺という観光地に近い場所にあって、外国人の観光客がよく来られますが、片手にパンを持って、土足で上がり座敷に上がったり、寝転んで稽古を見たりという、マナーの問題が発生しました。でも、稽古は見てもらいたいので、非常に悩むところではあります。

佐々木:親方がおっしゃるように、若い子たちが必死でやってる姿は毎回感動しますし、その日頑張ろうっていう気にもなるので、一度体験すると本場所の見方もかわってくるし、ぜひ行ってもらいたいんですが、同時に難しいなと思うのも同感です。

西岩:亡くなった私の師匠(元横綱・隆の里の先代鳴戸親方)は、稽古は人に見せるもんじゃないって言ってたんです。そして、本場所は人に見せるものだって。歌舞伎役者でも練習風景は見せない。本番を見ていただく。相撲だって同じだって。でもね、やっぱり力士が努力している姿は見てもらいたいので、西岩部屋にはどんどんきてもらいたいです。力士も、お客さんが見てくださる方が気合が入って、やる気が出るって言ってましたね。

佐々木:例えば、行くときに気をつけることはありますか?

西岩:横になってみるとか、飲食しながらっていうのは、普通はないと思いますから、特にはないです。

佐々木:差し入れはどんなものが喜ばれますか?

西岩:なんでも喜ばれます。西岩部屋にはあまり食べるものがありませんから(笑)。

佐々木:写真とかサインはお願いしていいものでしょうか?

西岩:そこは空気の問題ですね。部屋にもよりますが、西岩部屋は写真はOKです。動画はNGですが、写真は稽古中でも大丈夫。

佐々木:関取衆に聞いたところ、サインとか写真とかは対応しますんで声かけてもらえれば、っていう方はけっこういらっしゃいますね。

西岩:それはほとんど大丈夫じゃないですか?

佐々木:ただ、どうしようどうしようってなってる人に、関取みずから「やりましょうか」って歩み寄るのも恥ずかしいっていうのがあるので、みなさんそこは遠慮せずにはっきりとお願いしたほうがいいみたいですよ。

西岩:はい。ほぼ大丈夫だと思います!

 

ちょっと旧鳴戸部屋を描いてみました

佐々木:この本ではイラストのことを聞かれることが多いので、料理番組みたいに段階ごとに駆け足で過程をお見せしようかと。実は、本には載っていない部屋を描いてきました。西岩親方が入門された、松戸にあった元隆の里の鳴戸部屋です。資料があまり残っていないので、初場所中に西岩親方にどんな感じだったかを聞いて描いてみました。

作品をプロジェクターに映すのをお手伝いしてくださる西岩親方!

佐々木:まずはこれが下書き。ざっと描いてから、だんだん詳しく描いていきます。で、次がペン入れをするとこんな感じに。土俵は最後に描くようにしてましたね。で、スクリーントーン貼って仕上げるとこうなります。旧鳴戸部屋の特徴は土俵のまわりに白い点々があるんですね。親方、ご説明お願いします。

西岩:白線なんですが、ふつうは土俵中央に二本、仕切り線が描いてありますが、同じように白いペンキでまわりにも描いてあるんですよ。これは大人数で申し合い稽古をするときに、どうしても俵ギリギリのところで次の力士が待ってしまう。これだと相撲をとってる二人とぶつかってケガをする可能性があるということで、土俵まわりに白線を描いてここから前に出るなという、ケガ防止ですね。

佐々木:こんなふうにやってたのは鳴戸部屋だけですよね?かなり特徴的だと思うんですが……。

西岩:ほかにはないでしょうね。

こちらが松戸にあった元横綱・隆の里の旧鳴戸部屋。左の上がり座敷においてあるのは、首を牽引する器具だそうです。

佐々木:そうなんですよね。で、イラストの方は、最後にトレーシングペーパーを重ねて、ここに親方が座っているとかどこに何がおいてあるとかを書き込んで仕上げるという感じです。今回の原画展ではトレーシングペーパーをかける前の原画も展示しておりますので、ぜひご覧になってください。 *東京・大阪での原画展は終了しましたが、今後全国を巡回予定。開催が決定次第、おすもうさんサイトおよびツイッターでお知らせします!

西岩:これはすごい才能ですよね。

佐々木:いやいや……。雑誌での連載は4年だったんですが、最初の頃のものは今と比べるとひどい絵なんです。そんな成長の過程もご覧いただける展示となっております。

西岩:僕の絵も何点か飾っておきましょうか(笑)。

*西岩親方の作品は、おすもうさんの過去のインタビューでご覧ください→コチラ

佐々木:ぜひ! というわけで、最後は駆け足になってしまいましたが、本日はありがとうございました。

拍手で見送られるお二方。「今日は佐々木さんが主役だから」と西岩親方に花道を譲られ、はにかみながら退場する佐々木一郎さんと、笑顔で後に続く西岩親方。ガラスケースに展示されているのは稽古場物語の原画。

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