国技館のある両国からJR総武線や都営バスで西へすぐの江戸川区。昔からいくつもの相撲部屋が部屋を構え、現在では武蔵川部屋と田子ノ浦部屋があることでも知られています。
今年は田子ノ浦部屋所属の稀勢の里関が横綱に、高安関が大関に昇進! それを記念して、区の文化施設である篠崎文化プラザでは「えどがわ大相撲展」を開催しています。というわけで、今回はおすもうとゆかりの深い江戸川区をブラ~リ。
2回にわけてのブラリの1回目は篠崎文化プラザがある都営新宿線篠崎駅を起点に、都営新宿線界隈を各駅停車でブラブラ。江戸文化を体験できる伝統工房からコーヒーショップ、おすもうゆかりのお寺まで、1日みっちり楽しめます。
えどがわ 大相撲展(篠崎文化プラザ)
原寸大の土俵が迎えてくれる展示室には、江戸川区にある2つの部屋の紹介、力士をはじめ、行司、呼出、床山の道具の展示、そしてさまざまな体験コーナーなどが所せましと並んでいます。
<江戸川区と相撲部屋>
第67代横綱武蔵丸の武蔵川親方率いる武蔵川部屋、そして第72代横綱稀勢の里関、大関高安関が所属する田子ノ浦部屋をパネルや映像で紹介。そのほか、かつては江戸川区にあった相撲部屋を紹介するコーナーも。伊勢ノ海部屋や、第58代横綱千代の富士が現役時代には九重部屋も江戸川区に部屋を構えていました。
<さまざまなおすもう体験コーナー>
入口すぐのおすもうさん原寸パネルでは、おすもうさんと背比べ! 日本人関取では最も長身の勢関と、江戸川区出身の英乃海関が登場。このほかおすもうさんの大きさを実感できる体験モノとして、おすもうさんサイズの浴衣をはおってみれたり、なんちゃってまわしを装着できたり、雪駄も試着可。
<おすもうならではの道具類を身近に>
ふだんなかなか近くで見ることができない、大相撲の道具が展示されています。力士や行司の旅行鞄でもある「明荷(あけに)」というつづらや、化粧まわし、行司の軍配や呼出の扇子、床山のくしなど、どれももちろんホンモノです。第44代横綱・栃錦や、元立行司(行司さんのトップ)の第34代木村庄之助、太鼓と土俵作りの名手といわれた元呼出の善三郎と、江戸川出身の力士・行司・呼出ゆかりの展示も。そのほか、昔の相撲雑誌などもあって見ごたえ十分。大好評につき、会期も延長されました。
「えどがわ 大相撲展」
篠崎文化プラザ3F企画展示ギャラリー
江戸川区篠崎町7-20-19(篠崎駅直結) tel:03-3676-9071㈹
~2018年1月28日(日) 9:00~21:30 入場無料
小松菜&おすもうメニューを
「えどがわ 大相撲展」と同じフロアにある「伝統工芸カフェ・アルティザン」では、江戸川名物の小松菜を使ったメニューや大相撲展会期中限定でおすもうメニューを提供。
新鮮な小松菜のジュースやスムージーから、小松菜を使ったパスタやサラダが味わえるほか、とれたての小松菜も販売。そのほか、スイーツやドリンクメニューが豊富に揃い、ゆったりとした店内でいただけます。
(写真上から)
小松菜ジュース(360円)、ちゃんこ力うどん(大相撲展会期中限定、880円)
「伝統工芸カフェ・アルティザン」
篠崎文化プラザ3F tel:03-3676-9083
9:00~21:30(LOフード20:30、ドリンク21:00)
体験・見学もできる江戸風鈴の工房「篠原風鈴本舗」
篠崎から都営新宿線で1駅。瑞江駅へ。駅から12~15分ほど歩くと、藍地に白で「江戸風鈴」と染め抜かれたのれんが目に飛び込んできます。大正4年創業、江戸の粋を伝える風鈴の工房兼店舗です。ガラスの風鈴を江戸風鈴と名付けたのは先代だそう。現在、東京で江戸風鈴を作っているのはここだけ。
風鈴は、1300度に熱した電気炉に埋め込んである坩堝(るつぼ)というつぼの中で溶かされたガラス玉を棒に巻き取り、さらにガラスを巻きつけて吹いてふくらませていきます。この製法を宙吹き(ちゅうぶき)といって、一人前になるには10年かかるとか。これに油性顔料で絵付けをします。昔ながらの伝統柄は、カブに千両(オイチョカブ<花札>に勝って小判が入る)、船に松(宝船を待つ)など、シャレを効かせた縁起物。涼しげな金魚や花火も人気。
宙吹きから絵付けまでは見学も体験も可能。時間がなければ絵付けのみのショート体験コースもあります。冬に風鈴? と思うかもしれませんが、夏の繁忙期は見学体験ともにできないので、逆にこの時期がねらい目なんです。作った風鈴はその日に持ち帰れますよ。
「篠原風鈴本舗」
江戸川区南篠崎町4-22-5 tel:03-3670-2512
日・祝日休み
見学は無料、体験は1500円~ (いずれも要電話予約、7月~9月上旬は不可)
photo / Takayuki Kambara
こだわりのスペシャリティコーヒーでひと息「エドガワコーヒーカンパニー」
瑞江駅からさらに一駅! 一之江駅でひと息入れましょう。環七通りを少し北に行って、第58代横綱・千代の富士が優勝パレードをしたという通りを左へ折れてさらに左。路地にたたずむ小さなコーヒーショップがあります。
ニュージーランドに20年住んでいたというオーナーの佐藤さん、実は出身は中野のほうで、元関脇の若翔洋とは同級生だとか。南米・アフリカ・アジアなど世界各地の、精製方法も品種もさまざまにセレクトしたコーヒー豆は、スペシャリティーコーヒーにこだわったラインナップ。個性もそれぞれ違い、いろいろ飲み比べてみたくなります。その場で挽きたてを味わえ、香りの高さにうっとり。癒やされます。ドリンク類のテイクアウト、豆の販売もOK。
さらに、スイーツ好きなら日替わりのホームメイドスイーツを! ニュージーランド仕込のビッグカットがうれしい。味も濃厚でコーヒーとよく合います。
ちなみに、コーヒー屋さんですが、昼から飲めます(アルコールね)。それもうれしい。
(写真)
ハウスブレンド(370円)、 抹茶のケーキ(350円)
「Edogawa Coffee Company」
江戸川区一之江7-33-19-102 tel:03-5879-2716
12:00~22:00 火曜・水曜休み
別名・相撲寺! 草相撲で知られた「善照寺」
さて、各駅停車もここで最後。都営新宿線・船堀駅です。別名「相撲寺」なるお寺を発見!目印はボートレース江戸川。ここのちょい先です。
そもそも相撲寺とよばれるようになったのは、江戸は元禄のころから。南合住職にお話を伺うと、初代横綱といわれている明石志賀之助がここで引退相撲を行ったことがきっかけだとか。それ以来、毎年草相撲が開催されるようになり、昭和18年まで続いていましたが、戦争で中絶し、戦後1回のみ復活するもそれからは途絶えています。
草相撲が行われていたのは本堂前の広場。近所の人が持ち寄った臼を土台にして土俵が築かれ、柱を立てて屋根をしつらえ、幕を張り、地元の人の手づくりで相撲場がこしらえられました。行司は当時の伊勢ノ海部屋(現在の伊勢ヶ濱部屋にあたるそう)に頼んでいたといいます。この相撲は年々盛んになって、この相撲大会で三役になれば、田舎相撲の大関格になれるというほどの権威があり、出場者は250人にも上ったとか。ちなみに江戸末期に地元の選手の勝負をめぐって物言いがつき、大ゲンカに発展。それ以来、地元力士は出場させない不文律ができたそうです。上の写真は大正のころの草相撲の様子。満員の観衆に、土俵上では力比べでしょうか。(画像提供:善照寺)
今は静かな境内ですが、当時のにぎやかなおすもうの風景を想像しながら訪れてみてはどうでしょうか。
現在でも、当時の板番付などが残っているそうですが、かなり傷んでいるため、修復して公開できればと、住職の南合さん。
善照寺(ぜんしょうじ・別名:相撲寺)
江戸川区東小松川3-3-19
新潟づくしでほっこりくつろぐ「雪の窯珈琲」
ぶらりの最後はおいしいものでほっこり。豪雪地帯で知られる新潟は十日町出身のご夫婦がオープンさせたカフェ。メニューにも新潟が大フューチャーされています。
自慢は、雪室で熟成させたコーヒー豆を、新潟の天然水「津南」(つな!)で丁寧に煎れた雪室コーヒーや、魚沼産コシヒカリで作る甘酒を使ったレモネードなど。ほっと心がゆるみます。
写真:雪室珈琲800円(通常のコーヒーは400円)、雪室珈琲ジェラート350円(ランチタイムは食事に+200円)
店名にもなっている「雪の窯」。雪は新潟の雪。窯はというと、厨房奥のかまくらのような白いピザ窯のこと! そう、ここのもうひとつの名物はピザなのです。実はカフェを開く前は、奥様は有名コーヒーチェーン店で、旦那様は粉の問屋さんでそれぞれ働いていたというから納得。粉の扱いはさすがで、カフェメニューとは思えない、ピッツェリア並みのお味です。
写真:マルゲリータ750円
夜はさらにアルコール&フードメニューも充実。新潟の日本酒やクラフトビール、雪中貯蔵ワインなど、ここならではのラインナップ。雪室熟成じゃがいものジャガバターや美雪マス和え物、魚沼ぜんまいソテー、雪室熟成肉(雪室熟成牛ザブトン、雪室熟成豚のハムなどなど)といった新潟のうまいもんが勢ぞろい。お酒が進みそう。
江戸川ブラリの〆が新潟というのもなんですが、おいしいのでよしとしましょう。
「雪の窯珈琲」
江戸川区船堀4-12-8クレストフォルム船堀サウスステージ1F 03-6808-5055
12:00~22:00(LO21:00)
www.facebook.com/yukinokamacoffee
江戸川ブラリ第2弾はJR総武線新小岩&小岩界隈を相撲部屋をながめつつブラリします。