京大相撲部特集第2回目は、京大ならではの稽古についてうかがいました。
やってみたい技をなんでもさせてくれる、それが京大カラー
――京大相撲部の練習スケジュールを教えてください。
大津さん(以下、大):国公立の相撲部は基本的に週3のところが多いですけど、京大は週4です。月・水・木・土でやっています。平日は18時半から21時まで。授業が終わってからですね。土曜日は10時から12時半までです。
――週4日あっても全部に参加しなくてもいいのですか?
大:はい。理系の学部はレポートや実験が忙しくて来られないとかありますし、サークルと兼部している人もいます。アルバイトもありますし。欠席の報告があれば大丈夫です。
――そのあたりは自主性を重んじているんですね。大会前は、みんな練習に来るのですか?
大:そうですね。やっぱりみんな勝ちたいので。
――京大相撲部のここがいい!というところを教えてください。
板倉さん(以下、板):やってみたい相撲の技をなんでもさせてくれるところですね。某N大は立ち合いで頭からぶつかるのを信条としていて、それ以外の立ち合いは認めない、という雰囲気を感じます。
佐藤監督(以下、監):指導している人のカラーが出てきます。
大:京大は、監督も先輩も寛容ですね。強くなれるならなんでもやれっていう。こういうやり方で強くなりたいのか、じゃあ、こうしてみようって言ってくれる監督やコーチがいるので、すごくありがたいです。
――そこもやっぱり自主性を重んじているんでしょうか。
監:自主性というか…大相撲では「三年先の稽古」って言葉があるじゃないですか。でも大学生の場合、一回生の4月で入部しても、引退するのは四回生の11月で、選手生活っていうのは実質3年半しかないんです。なので「三年先の稽古」って言っていたら、選手生活終わっちゃうんですよ(笑)。だから、目先の勝ち星は大事です。基本的な四股だとか筋トレとか、ある程度の押しの力だとか、そういうものはもちろん必要なんですが、相撲の場合、勝ち方はそれだけじゃないので。足技がうまい人は足技いけばいいし、投げ技がうまい人は投げ技いけばいい。トリッキーなとり方をして勝ちが拾えるのであれば、それでいいし、どんどんやっていいと思っています。テレビで大相撲中継見たり、YouTubeで相撲の動画見たりして、「この技おもしろそう。できそう」って思ったら、チャレンジしてみたらいいと思うんです。
――それが京大のカラーなんですね。
監:そうですね。とにかく勝とう、自分のやりたい方法で勝とうという感じです。
――そこへのアドバイスを監督やコーチがしてくれる。
監:はい。去年の9月末まで、20年ぐらいコーチをしてくれていた方がいまして。60kgぐらいの軽量なんですけど相当なワザ師でした。40歳を超えてなお、社会人の大会にも出ていらっしゃいます。
部員からの信頼が厚い佐藤監督。自身1人が部員だったときの相撲部を復活させた立役者。
――大相撲じゃない、そういう魅力ってありますよね。
監:部員のほとんどがその方に育てていただきました。体が大きいから勝てるとか、腕力があるから勝てる、とか、そういうものでもないと。体が大きいことや腕力があることは有利だけれど、相撲で勝つのはそれだけじゃない、というのを、その方が徹底的に教えてくださいました。
――これまでチャレンジして試合で成功した技はありますか?
板:僕はいろいろな技を試すのが好きで。三回生のときにはまっていたのが、外小股です。
――外小股!
板:出し投げのあとで、相手の足を外側からすくって倒す。(実演)投げて、上手をつかんで、すーってあてて、ひっくり返す。
――すごーーーい!技の練習をしていらっしゃるんですね。
板:そういうつもりはないんですけど、相撲をとっているうちに外小股がかけられる体勢になっちゃうんで、かけてみようって。
――大会で決まったことは?
板:1回、北大戦で決まりました。
――それは会場沸きますよね。
監:沸きましたね。足をとる人ってあまりいないんで、やっぱり盛り上がりますね。
――板倉さんは、誰かの技を見て真似してみようって思ったんですか。
板:そういうんじゃないんですけど、正面から押せないなって思ったとき横についたら、みんな「すくってください」みたいは足をしていたんで、すくってみようかなって。
――目のつけどころがすごい!
監:押せないんだったら押す力をつけるのもひとつの方法ですが、彼(板倉さん)は、「ここで足をもったらバランスが崩れるな」っていうのがわかるんです。技をかけるタイミングを見測るのが、すごくうまいんです。重心が変わっちゃうと一瞬で足をあげられなくなっちゃいます。技のかけかたが理論的にはわかっていても、足をすくうタイミングがわからないとどう頑張ってもかけられないから、押す力をつけるしかないんですけど、わかるならその勝ち方でいいと思います。
――目のつけどころが違いますね。頭の回転が早い。
板:体が大きくはならなかったので、人よりも頭を使って勝つ方法を考えました。
板倉さんの必殺!外小股!足をとって。。。
返す! 足をとるタイミングが絶妙!
――小兵ならではですね。
板:体も痛めてきたので、頭を使うようにしました。腰も痛め、肩も痛め、首も痛め…
――満身創痍で出たのが外小股だったんですね。
監:京大相撲部は、歴代軽い人が多かったんです。板倉が入ったときにいた古屋という選手も60kgぐらいで活躍していました。板倉のあとにはいってくる人は、ほとんどデカくて。
大:僕も入部したときは70kgぐらいでしたよ(笑)
監:(笑)どんどん大型化しているんです。小兵には大変な時代。
――京大相撲部に新たな波が来ている感じですね。そのために足技が出るようになったんですね。
板:そうですね。大きい後輩を相手にするので、四回生になってからはとりあえず蹴ってみようって。裾はらいとか。たぐりが一番うまくいきましたね。たぐりに関しては相当稽古しました。
監督:おっつけとたぐりは、相当鍛えたね。
板:けっこうみんなひっかかります。
大:あれ?って思っている間にいつのまにか土俵を割っちゃう。
監:満身創痍で、それでも勝たないといけない。じゃあどうしたらいいってなったときに編み出したんですね。板倉は、どんどん相撲スタイルが変わっていったよね。
板:一回生のときは、頭からいくオーソドックスなタイプだったんですけど、気づいたら、立ち合いは変化しかしなくなりました。
――監督がおっしゃっていた目先の勝ちをいかにしてとるかを考えた結果ですね。
次回は京大相撲部のオリジナル稽古についてのお話です。
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