祝!新十両! 若碇関&甲山親方の親子インタビュー

秋場所に西幕下二枚目で勝ち越しを決め、見事十両昇進を果たした若碇関と、部屋付きの親方であり父である元幕内大碇こと甲山親方の親子インタビュー!

若碇関に続き、甲山親方のインタビューをお届けします。

甲山 剛(かぶとやま・つよし)

元幕内・大碇。伊勢ノ海部屋。京都府京都市西京区出身。同志社大学卒業後、平成7年三月場所幕下付け出しで初土俵。平成9年五月場所で新十両、平成10年五月場所で十両優勝、同年十一月場所で新入幕。平成13年十一月場所で2度目の十両優勝を果たし、翌一月場所で再入幕、平成16年十一月場所で引退。伊勢ノ海部屋の部屋付き親方として後進の指導にあたるかたわら、協会では教習所・決まりて係、指導普及部に従事。軽妙な関西弁のわかりやすいテレビ解説でも人気。

 

父と息子3人相撲漬けの毎日

ー先日、若碇さんのインタビューをさせていただきました!関西弁でした!

甲山親方:本人は江戸川区育ちですけど家庭ではずっと関西弁でしたからね。小さい時、友達もつられて関西弁になるという不思議なこともありましたね(笑)。

 

ー出身地は京都にされてるんですね。

甲山親方:本籍は京都なんです。縁のある地ということで。

 

ー伊勢ノ海部屋は京都ご出身多いですよね。同部屋も京の里さんですし。

甲山親方:京都の子が増えました。鳴滝、京の里に、去年入った醍醐山に太秦。

 

ーおーご当地四股名! ところで、若碇関が相撲を始めたきっかけは、やらされていた、とか?

甲山親方:無理やりではないですよ。「さぁ、相撲行こか〜」みたいな感じ。小松竜道場を紹介してもらって、別に嫌がることもなく、当然のように行ってましたね。

 

ー相撲以外もたくさん習い事されてましたね。

甲山親方:相撲、柔道、書道、スイミング、塾。塾はね、勉強できる友達につられて自分も行きたいと言ってきたんですよ。

 

ーへぇ〜。自発的に!

甲山親方:父親としては「勉強せぇ」とは言ったことはないです。宿題とか、授業態度とか、最低限のことはやりなさいというだけ。柔道も友達がやってたからやりたいって言ってきて。もう、送り迎えだけでも大変ですよ。

 

ーですね。相撲は、子どもが生まれたらやらせたいと思われていた?

甲山親方:男の子だったらね。僕も父親の影響で始めたんです。地元が京都の大原野というところで、相撲がさかんな土地でした。大原野神社の奉納相撲が毎年あって、町内では幼稚園から小6までの大会もありました。父親がそれに関わっていて、土俵を作ったりしていました。

 

ー大原野神社はおすもうさんでも「御田刈祭」の神相撲を取材させていただいたことがあります!

甲山親方:やっぱりそこで相撲をとるのが楽しかったんですね。

*「9月は京都の相撲神事でブラリ」で大原野神社のほか松尾大社、上賀茂神社をご紹介しています→記事を読む
松尾大社の記事内で、甲山親方が赤ちゃんの若碇関を抱っこして土俵入りをしている写真を紹介しています!
さらに今回新たにご提供いただきました。面影ありますね!土俵上右の白いワイシャツにネクタイ姿の男性は、甲山親方のお父様・幹夫さん。

写真提供/甲山親方

 

ーそうなんですね。若碇さんは3兄弟の長男ですが、下の2人も相撲やられてるんですか?

甲山親方:兄貴がやってましたから自然と。むしろ、次男は若碇より早くに始めたくらいです。

 

ー三男さんも早くから?

甲山親方:三男はなかなかやろうとしなくて、おもちゃでつってやらしてました。野球のね。相撲やらすのに野球のおもちゃを買うという(笑)。

 

ーよくわからないことになってますね(笑)

甲山親方:それで3人やり始めました。もうなんか義務のようにみんなでやってましたけど、たまに休みになると「よっしゃー!」って感じ。

 

ーお父さんも!?

甲山親方:僕もうれしかったですね〜(笑)。

 

ー相撲漬け一家ですね。若碇関が埼玉栄に進みたいとおっしゃったときはどう思われましたか?

甲山親方:小松竜道場のコーチが元出羽海部屋の出羽平で、埼玉栄のOBなんです。道場の先輩も何人か行ってましたし。道場でちゃんとやれている子は平(出羽平)が勧めて行かせるというのもあったんでしょうね。僕としても、やるなら一流でやってほしいですから、本人がその気なら反対はしませんでした。

 

ー寮生活になってしまって寂しくはなかったですか?

甲山親方:いやいや、まだ下の2人がいましたから。それにちょうど入学したときがコロナで、実はすぐに家に帰されたんです。場所も五月場所は中止で僕も家にいました。家には、ダンベルとかベンチプレスができるようなトレーニングスペースがあって、同級生とかも来てみんなでトレーニングしてましたね。家の近くの土手を走ったり。

 

ー相撲のコーチ(甲山親方)もいるしすごい環境ですね(笑)。

甲山親方:いやいや。でもね、埼玉栄のトレーニングセットがあって、それを本人は1人でやってましたよ。

 

ーそうなんですね。埼玉栄での3年間をどう見ておられましたか?

甲山親方:中学に比べて数段実力が上がりました。入ったときは、体も小さいしそこまでの選手ではなかったと思います。でも先輩や同級生は一流の選手ですから、負けん気の強さでやったようです。2年生ぐらいからレギュラーに入れるようになって。

 

ー3年生のときはキャプテンを務められました。

甲山親方:埼玉栄って常に優勝を狙ってる負けられない高校で、そこのキャプテンというのは相当な重圧だったと思います。とくに団体戦は絶対負けられない。その重荷を感じながらやるというのは、今の勝負強さにつながってるんじゃないでしょうか。勝負根性もついたと思います。今は、大相撲は個人戦ですから、気楽でしゃぁないんちゃいますかね(笑)。

 

ーご本人は、ある意味大相撲は“楽”とおっしゃってたのは、そういう面もあるんでしょうね。

甲山親方:のびのび相撲取ってますよね。

 

躍進の要因は大相撲のシステム!?

 

ー高校卒業時、大学進学か大相撲入門かで迷われたみたいですが。

甲山親方:高卒でもある程度力はついてきているし、今入門して5年くらいかけて関取を目指せばええかなという感じでした。ちょうど伊勢ノ海部屋も、錦木がいて、勢もまだ引退してすぐで胸も出せるし、幕下が当時5人くらいいたので、いい稽古ができる。入るなら今やって。

 

ー5年どころではありませんでした。

甲山親方:ほんまに。期待以上、びっくりの成績ですよ。考えられない。幕下まではさっと行くやろうと思ってたんですが、幕下中盤からは苦労すると思ってました。

 

ー負け越しなしです。

甲山親方:場所ごとに力がついていきましたね。幕下十五枚目くらいでちょっと壁があるやろって思ってたら、勝ち越した。相撲をみてると、毎場所、これは来場所いけるやろうという感覚にさせられました。先場所(令和6年九月場所)は幕下二枚目で、もうそんな壁はないやろうと。ワンチャンス行けるんちゃうかなという感覚で場所を迎えましたね。

 

ーこうトントンといけた要因はなんでしょうか。

甲山親方:まぁ、まだ相手が若碇の相撲を知らないというのはあったと思いますが、大相撲のシステムというか、全部勝てなくても、勝ち越せば上がっていけるっていうアマチュアにはないシステムが合ってたんじゃないですかね。

 

ーなるほど〜。

甲山親方:めちゃくちゃ強くなくても、ある程度力があって、自分の相撲を取り切って1つでも勝ちが多ければいい。

 

ーけっこう4勝3敗で勝ってきているという勝負強さがありますね。

甲山親方:その辺りは、自分と違って図太いというかね。僕だったら負け越してるなというところを勝ってるのは、やっぱり埼玉栄でキャプテンの重責のなかでやってきたのが大きいんじゃないでしょうか。

 

ー相撲の取り口では、若碇の良さはどんなところでしょう?

甲山親方:しぶとさと、投げが強いですよね。右からの投げを得意としてますから。でも、あんまり大きい投げを打つと怪我につながるんで気をつけろとは言ってます。

 

ー関取を確実とした九月場所(令和6年)千秋楽は解説が親方でした!やっぱりうれしかったですか?

甲山親方:勝てば十両が確実でしたから、力士にとってこの瞬間は一生に一回です。今後、落ちてまた再十両というのはあるかもしれませんが、新十両は1回だけ。単なる勝ち越しじゃないので、見てる方が緊張しましたよ。

 

ー幕内に上がる一番が、また親方の解説だったら運命ですね。

甲山親方:でもね、幕内ってそこまで緊張しないんです。やっぱり、幕下から関取に上がる一番、ここ一番がね。人生かかってますから。上がるかどうかのチャンスが何回もあるパターンもありますが、今回は一発目。まだ19歳ですし、負けても次頑張ればいいんですが、やっぱり勝ってほしいですよね。でも、まだ上はあるんで。若いですから焦らずに怪我をしない体を作りながら稽古していってほしいですね。

 

あの一番が決まったときのこれはガッツポーズではなく、「ふぅ〜。あ〜よかった〜」という安堵のポーズだそうです。

 

“碇三兄弟”が土俵を沸かす日々も近いかも!

 

ー若碇関には、どんな力士になってほしいですか?

甲山親方:お客さんを喜ばせるような相撲をとってほしいです。喜ばせる=いい相撲ですし、わくわくさせるようなね。あとは、教習所でも言うんですが、強いだけじゃなくて、人間的に謙虚で感謝の気持ちを忘れない、そんな力士になってほしいです。絶対調子に乗るなと。

 

ー乗らなさそうですが・・・・

甲山親方:そこはわからないですよ。人気出てきたら人は変わりますからね。そのときは、僕が鼻をへし折りますけど(笑)。

 

ーそんなお兄さんの後を追って、次男さんも入門予定とか?

甲山親方:来年(令和7年)の1月に伊勢ノ海部屋に入門する予定です。国体でベスト4に入ったんで、三段目付け出しで。

 

ーおお!また京都勢が部屋に増えますね!

甲山親方:ニセ京都人がね(笑)。

 

ー次男さんも関西弁なんですか?

甲山親方:もちろん。

 

ーちなみに三男さんも関西弁?

甲山親方:もちろん。

 

ー笑! ところで、次男さんの四股名はもう考えておられるんですか?

甲山親方:ちょっと頭にはあります。

 

ー若碇はいい四股名ですよね。

甲山親方:マネージャー(浅坂さん)が提案してくれてね。実際にいたらしいですよ。大碇の息子じゃないですが、弟子にいたそうです。次男も碇はつけようと思ってるんですけどね。

 

ー三男さんも相撲を続けられてるんですか?

甲山親方:はい。来年、埼玉栄に進学予定です。

 

ーそれは楽しみですね。ぜひ大相撲に入門していただき、“碇三兄弟”を見てみたいです!

photo/Kaori MURAO

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