西岩部屋~平成30年“たたき上げ”の第一歩~その②

西岩部屋大特集第2回目は、西岩親方のおすもう以外の一面をご紹介。おすもうさんのなかには、元横綱・日馬富士のように絵を描いたり、式秀親方のようにビーズアクセがプロ級だったりと、芸術的な才能を持ちあわせた人が少なくありません。西岩親方も、書、絵、陶芸と多才。今回は作品の一部を見せていただきながら、親方とおかみさんにお話を伺いました!

引退相撲の引き出物はみずからろくろを回した陶器!

―ご著書の『たたき上げ』という題字もそうですが、部屋の看板も親方が書かれたとか。
西岩親方:そうなんです。

―書道は習われていたんですか?
西岩親方:いいえ。

―すごい!絵も字もお上手なんですね。
おかみさん:あの花瓶も実は親方作です。(ご自宅の応接室に飾られていた花瓶を指さして)
-おぉ! そうでした陶芸もされるって本にも書いてありましたね。この湯呑みも?
西岩親方:これは違いますが、使っているのもありますよ。お皿なんかも実際に使ってます。

―陶芸はどれくらい前から始められたんですか?
西岩親方:もう10年以上ですね。

-きっかけは?
西岩親方:子どもの頃から何か物を作ったり、絵を描いたりするのが好きだったんです。偶然、ある陶芸の先生と出会いまして、最初は冗談で「今度、陶芸を教えてください」って話したら、ぜひ来てくださいということになって。三鷹に窯があるんですが、遊びに行くつもりで行ったらさっそくろくろを使わせてもらって。それから時間があると、三鷹に行ってろくろを回したりお皿を作ったりしてます。人にも結構差し上げましたよ。

―引退相撲の引き出物もご自身で作られたんですよね?
西岩親方:はい。600個くらいですかね。

―プロですね。
西岩親方:陶芸教室の方々に協力してもらいながらやりましたが、あれは時間かかりました。一回素焼きして、名前を入れて、もう一回焼くんです。それを箱に入れて箱に名前を入れて。

―うわー。箱に入れるだけでも大変!
西岩親方:時間はかかりましたけど、市販されているものをプレゼントされてもね。一生に一回の引退相撲だから、喜んでいただきたくて、一個一個手で作ったものを引き出物にしようと思いました。

(おかみさんが親方の作品を持ってきてくださる)
―すごい! 字が書いてあるのは味がありますね。
西岩親方:相田みつをさんじゃないけど、わざと子どもっぽい字で雰囲気を出しているんです。

―この湯呑(写真上、右・茶色)に九百勝って書いてありますね。
おかみさん:引退の時、914勝だったんです。歴代7位です。
西岩親方:これは(写真下、右上)どんぶりのつもりで作ったら大きすぎて……。今はお菓子とか入れてますね。

-おすもうさんならラーメンでもいけそうですけど。
西岩親方:そうそう。本当はごはん入れて、食べ終わると「ごちそうさま」って出てくるといいなと思って作ったんですよ。

―ほんとだ! こちらのお皿はまた料理が映えそうな。
おかみさん:お魚とか出し巻を盛ったりしています。
西岩親方:ちなみに玄関にあった胸像見ました?(ご自宅玄関に親方の胸像が飾られていました)

―見ました!
西岩親方:あれは陶芸の先生が作ってくれたんです。銅像はよくありますが、あれは焼き物なんです。

―焼き物ってすごい! あんなに大きいのは割れてしまいますよね?(普通の大人の大きさくらいある)
西岩親方:ちょっとぶつかったら割れますよ(笑)。あれね、夜中にニコッて笑ったりしてるんですよ。

―えーーーー!親方の魂が・・・・。
西岩親方:夜な夜な歩き出すんです(笑)。
おかみさん:引退相撲で先生からプレゼントしていただいて、引退相撲のときは国技館のエントランスに飾らせていただきました。

―絵も描かれるんですよね?
西岩親方:はい。
おかみさん:絵はお譲りしたり、寄贈させていただいたりしています。

―奈良のけはや座にありました!(けはや座の詳細はコチラ
西岩親方:行かれたんですか。押し入れにしまっていてもしょうがないし……。見ていただけたらと思って。

―これは山本五十六の!
西岩親方:そう。戦艦ヤマトです。現役の頃に描いたんです。

―素敵~。飾らないんですか?
西岩親方:飾るところがないんで、しまってます。

―油絵ですね。ちなみに絵の先生は?
西岩親方:いないです。

―独学で油絵するなんて!
おかみさん:びっくりしましたよ。ある日突然、親方が油絵のセットを買ってきて(笑)。

―道具から入るタイプですか!
西岩親方:やってみたかったんですよ。絵はもともと好きで、子どもの頃、絵で世界までいったんです。

―それ、本に書いてありましたね。
西岩親方:唯一の自慢なんで(笑)。小学生のときに学校で賞をもらって、弘前市の大会に出したらまた賞をもらって、青森県の大会に出したらまた賞をもらって、全国大会に出したらまたまた賞をもらって。それで世界大会までいったんです。そしたらそこでも賞をもらったんです。

―それは何の絵だったんですか?
西岩親方:茅葺屋根です。屋根に雪を積もらせて、雪かきをしている人たちを描きました。

―水彩で?
西岩親方:はい。
おかみさん:青森ならではの絵ですよね。

絵と相撲、どちらも基本あってのくずし

―ふだん美術館とかよく行かれるんですか?
西岩親方:あんまり行かないです。

-見るより、描く派?
西岩親方:描く方が楽しいです。

―自分のイメージに向かって描かれるタイプ? それとも描いているうちに発展するタイプ?
西岩親方:イメージに向かって行くタイプですね。

―相撲もそんな感じですか?
西岩親方:うーーーん……。でも、相撲も絵も似てますね。

―どんなところが似ているのでしょうか?
西岩親方:まず、基本ができないと何もできない。たとえば、ピカソの絵って人の顔でも目と口の位置がバラバラでとても人の顔とはわからないですが、何億円もする絵でしょ。そういうプロの人は、写真みたいな絵を描けと言われたら描けるんです。基本ができているからくずすことができる。だから、何億という価値がある。相田みつをさんも、くずした字を書かれますが、書家としてものすごくきれいな字を書かれるんです。

―共通するところがありますね。
西岩親方:歌でも、楽譜通りに歌えるけど、上手い人はあえてテンポを外したりね。相撲も全く同じ。基本がないのに、いろんな技をしようと思ってもできるはずがない。

―まずは基本を身につけてから、ですね。
西岩親方:はい。今、西岩部屋にいるのは若い力士ばかり。まずは基本を覚える段階です。「関取みたいに投げて格好よく勝とうなんて思うな。まずは基本を覚える段階なんだから、順番を間違えちゃだめだよ」と、いつも言っています。

―芯がないとだめということですね。
西岩親方:はい。

芸術と相撲。相通ずるところがあるんですね。次回はこんな親方の指導論も交えながら、西岩部屋のご紹介です。おかみさんとの二人三脚のお話など、乞うご期待!

photo/Tomoko HANAI(食器と絵以外)

西岩部屋
東京都台東区寿4-4-9
稽古見学は自由(8:30~10:30頃)
詳細・お問合せはHPより

西岩 忍にしいわ・しのぶ)
本名・古川 忍(こがわ・しのぶ)
昭和51年7月10日生まれ、かに座、O型、青森県弘前市出身。
弘前市立第二中学校卒業後の平成4年、元・隆の里の鳴戸部屋に入門。「古川」のしこ名で同年三月場所で初土俵。平成9年十一月場所の十両昇進を機に「若の里」に改名。平成10年五月場所で新入幕を果たす。同場所で敢闘賞を受賞し、平成13年一月場所で関脇に昇進。平成27年九月場所で引退、年寄「西岩」を襲名し、田子ノ浦部屋の部屋付き親方として後進の指導にあたり、平成30年2月1日付けで独立、「西岩部屋」を開く。
プライベートでは、平成16年に結婚、引退後にスイスへ新婚旅行。平成29年に第一子が誕生。

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