呼出しさんが履く裁着袴(たっつけばかま)を手縫いで製作する唯一の職人、富永皓さん、山口由紀さん親子。お父様の富永さんは、厚生労働省から「現代の名工」として表彰されています。また江東区指定無形文化財(工芸技術)保持者でもあります。
深川の和裁職人の家に生まれた富永さん。お父様を師に、和裁を習得されました。裁着袴はいつから作ってらっしゃるのですか?
「栃錦さん(第44代横綱)の着物を仕立てたことがあって、その縁で呼出しの寛吉さんから裁着袴を作ってくれって言われたのが始まりです。昭和35年ごろですかね。裁着袴なんて作ったことないから1つもらってほどいて、それで型紙を作りました」(富永さん)
2006年に「現代の名工」、2013年に江東区指定文化財に。 80歳を超えてもお元気!
呼出しさん全員、個別に型紙を作っています。
和裁というと型紙がないのが一般的ですが、呼出しさんが動きやすい裁着袴を作るため、富永さんは1人1人それぞれのサイズに合わせた型紙を用意しています。一番のポイントは、膝から下、ふくらはぎから足首にかけてだそう。ここを足にぴったりさせられるかどうかが見た目のかっこよさにつながるため、製作の要となります。全て手作業で行うとなると、1着仕上げるのにどのぐらいかかるのでしょうか。
「私は朝から夕方まで、娘は昼ごろから夕方まで作業しています。家内も手伝います。それで3日かかりますね。2人分を同時に仕立てることが多いです。修繕も一緒にやっていますよ。昔は着物の仕立てもしていて弟子もいたのですが、今は家族でやっています」(富永さん)
82歳の富永さんを中心に、ご家族で製作していらっしゃいます。跡を継ぐのは、次女の山口由紀さん。
「一緒に仕事をするようになって、20年近くになります。小さいころから父の背中を見てきたので、仕事の様子はだいたいわかってはいました。大変なのは、生地を何枚も重ねると硬いので、力を使うことでしょうか。指ぬきがないと仕事になりません。でも、ときどき指ぬきを針が貫通したり、針がツーッと抜けて指に刺さったり……」(山口さん)
3代目となる娘の山口さん。家族で伝統技術を守り、継承しています。
富永さんの作業風景。あぐらをかいて生地を足の指に挟み、ひっぱりながら縫い進めます。
わ…痛そう……。でも、お父さんと娘さん、師弟でありながら仲良く作業されている姿はステキです。
ところで、大相撲はご覧になりますか?
「テレビでね。やっぱり呼出しさんが気になって見ますね。袴の形とかね、かっこよく履いているか、とか」(富永さん)
さすが、目のつけどころが違います。呼出しさんの裁着袴の着こなしにも注目すると、さらにおすもうがおもしろくなること間違いなし!
2018年3月11日(日)亀戸梅屋敷・多目的ホールにて、富永さんと山口さんの裁着袴製作の実演が行われます。
匠の技に触れられるまたとないチャンス!ぜひ足を運んでみてください。
詳しくは、江東区のホームページをチェック!
https://www.city.koto.lg.jp/index.html
Photo/Kaori Murao