西岩部屋~平成30年“たたき上げ”の第一歩~その⑤

西岩部屋大特集も第5回目です。今回は西岩部屋のちゃんこについて。まだまだ入門間もない力士ばかりの西岩部屋では、ちゃんこ作りも親方が厨房に立って直接指導中。そんな西岩部屋のちゃんこメニューから、ちょっぴり脱線して血液型の話しなど、お届けいたします~。

巡業先からも指示をだしてメニューを決めています

-今回は西岩部屋のちゃんこについてです。
西岩親方:何が大変かってね、ちゃんこですよ。まだ15歳の子たちですから、ちゃんこなんて作ったことないんです。だから私が一緒に作って教えています。

―夏巡業は親方は巡業に出られてましたが、その間は?
西岩親方:夏巡業に備えて、名古屋場所のときはみんなにちゃんこノートを持たせて、毎日ちゃんこの作り方を書かせたんです。材料は何で味付けはどうするか。巡業中は毎日電話で今日はこれを作りなさい、材料はこれとこれでこんな味つけにして、できたらおかみさんに味見を持って行きなさいって指示を出してね。やったよね。
おかみさん:はい。決めるのは全部親方で。親方の留守中は、私は見守るだけです。親方の指示通りできているか、手を切らないように包丁を使えているか、きれいに洗い物ができているのか。私が意見を言ってしまうと力士たちが混乱しますので、私は見るだけ。

―鍋のレパートリーはどれぐらいあるんですか?
西岩親方:20~30種類ですね。

―そんなに! 一番人気は?
西岩親方:なんだろう?
おかみさん:お客様が好まれるものと、力士たちが好きなものはぜんぜん違うんです。

―力士に人気なのは?
おかみさん:オーソドックスなソップでしょうか?
西岩親方:なんだろうね。肉がいっぱい入ったやつとか、、、カレーとかですかね。

-お客様は?
おかみさん:いかのワタを使ったちゃんこはおいしいって言ってくださいますね。力士たちにはクセが強すぎるようです。
西岩親方:いかのみそ炊きちゃんこね。みそだけじゃなくて、いかのワタ、イカゴロっていうんですが、これを入れるんです。最初にイカゴロを油で炒めて、それを酒でのばしていって、お湯を入れてみそで味付けをするんです。スープがおいしいですよ。

―それは鳴戸部屋のレシピなんですか?
西岩親方:そうです。

―おいしそうです! いろんなバリエがあるんですね。
西岩親方:はい。ベースがみそ、塩、しょうゆ、ぽんず、キムチ、カレーとあって具をいろいろ変えるとバリエーションは相当ありますね。夏巡業のときは、毎日私がメニューを決めて指示を出していたんですが、1日だけ巡業から戻ってくる日があって、その日は自由に作らせたんです。
おかみさん:親方もドキドキだったでしょうが、こちらもドキドキでした。事前に私がついて練習したんですが、あたりまえのことを知らないので、野菜炒めで油を引き忘れたり……。何回か練習してなんとか形にはなったんですが……。

―何を作られたんですか?
おかみさん:最初はポテトサラダです。
西岩親方:ポテトよりハムとか玉ねぎとか、ポテト以外の材料のほうが量が多いんですよ。これなんだ?って思いました(笑)。そのあとはすき焼きかな? 味的にはまぁ、そんなにおいしくないんですが、彼らが自分たちで一生懸命考えながら作ったんだと思うとおいしかったし、うれしかったですね。

―相撲だけでなくて料理の上達も楽しみですね。
おかみさん:相撲部屋の生活にだんだん慣れてきて、覚えてくるっていう成長もそれはそれで楽しみですね。

 

ちゃんこノートに現れる血液型別性格の違い

(ちゃんこノートを若佐竹さんが持ってきてくれる。みんなで見ながら)

西岩親方:これがノートで、私が口頭で言うのをみんなが書きとめていくんです。これ、なかなかきれいに書いてるね。
おかみさん:誰のですか?
西岩親方:若中谷。
おかみさん:若中谷は一番字がきれいなんですよ。若藤岡は書くスピードがついていけないんです……。

―でも、冬瓜って漢字で書いてますよっ!
西岩親方:本当だ! すごいな!

―あ、でも間違ってるかも……。いや、でも漢字で書こうという意欲がいいですねっ!
西岩親方:ま、15歳ですから。料理もね、作れなくて当たり前なんです。あ、若小菅もきれいに書いてるね。

―おかずパスタ!
西岩親方:ちゃんとメモってるね。

―アルデンテって書いてますよ。
西岩親方:そう。私がアルデンテって言ったら、「アルデンテってなんですか?」って聞くから、かためのことだよって教えたんです。

―ちゃんと、アルデンテ(かため)ってメモってますよ!
西岩親方:よし。

―親方、ちゃんこの作り方はだいたい鳴戸部屋で覚えられたんですよね?
西岩親方:そうです。

―鳴戸部屋でおかずパスタなんて出たんですね~。
西岩親方:出ないです(笑)! これはうちの家内直伝です。

―ですよね(笑)。
おかみさん:若小菅は性格がB型って感じで、すっきりしていて賢いです。

―そういえば、私たち、親方が血液型で性格診断されるって聞いてきたのですが……。
西岩親方:だいたいその人の動きを見れば何型かわかりますよ。
おかみさん:だから夜の会議のときでも、あの子は何型だからって血液型の話がでますよ(笑)。

―へ~。
西岩親方:A型は細かいし、繊細。B型は自分中心で何も考えてないですよ。あ、すいませんB型をぼろかすに言っちゃって。

―ちなみに、私B型です。
西岩親方:あ、いや~B型はね、いい人が多いんですよ~。Bはね、天才肌ですから。一番の典型は稀勢の里です。あと、長嶋茂雄さんでしょ、超一流選手が多い。
おかみさん:イチロー選手もそうですね。
西岩親方:大成しますよ。突き進んでください。

―ありがとうございます。おかみさんは?
おかみさん:私はA型です。細かいことが気になるんですが、力士にもA型の子がいて、私と似たようなことが気になるんです。親方が「そんなこといちいち気にするな」って言ってるんですが、内心、いや~気になるのよ!って。やっぱり血液型が反映されてるのかなって思います(笑)。
西岩親方:私はO型なんで、なるようになる、前に進めって感じですが、家内は全部計画してからでないと前に進まないタイプ。

―お弟子さんは全血液型いらっしゃるんですか?
西岩親方:AB型はいないですね。
おかみさん:B型が多いんですよ。

―お!それは将来が楽しみですね。ちょっと話がずれましたが、このちゃんこノートにも血液型が反映されてるってことなんですね。
西岩親方:そうですね。これね、みんなが引退するときか、結婚するときにお嫁さんに渡そうかと思ってるんですよ。

それはいい記念になります! しかも、その力士が独立することがあれば、このノートとともに西岩部屋のちゃんこが語り継がれていくわけですね。

ちゃんこノートから思いがけず血液型の話しになってしまいましたが、夜の会議で親方とおかみさんが、あの子はA型だから……などと血液型でお話しされているのを想像すると、なんだかほっこりしますね。さてさて、いよいよ次回は西岩部屋特集最終回。部屋がある浅草をテーマにお話を伺いました。お楽しみに!

photo/Tomoko HANAI(ノート以外)

西岩部屋
東京都台東区寿4-4-9
稽古見学は自由(8:30~10:30頃)
詳細・お問合せはHPより

西岩 忍(にしいわ・しのぶ)
本名・古川 忍(こがわ・しのぶ)
昭和51年7月10日生まれ、かに座、O型、青森県弘前市出身。
弘前市立第二中学校卒業後の平成4年、元・隆の里の鳴戸部屋に入門。「古川」のしこ名で同年三月場所で初土俵。平成9年十一月場所の十両昇進を機に「若の里」に改名。平成10年五月場所で新入幕を果たす。同場所で敢闘賞を受賞し、平成13年一月場所で関脇に昇進。平成27年九月場所で引退、年寄「西岩」を襲名し、田子ノ浦部屋の部屋付き親方として後進の指導にあたり、平成30年2月1日付けで独立、「西岩部屋」を開く。
プライベートでは、平成16年に結婚、引退後にスイスへ新婚旅行。平成29年に第一子が誕生。

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