“『相撲浴衣反物見本帖』浴衣をデザインする・染める” 拡大版

2026年7月14日にCOCON BOOKSより発売となった佐々木一郎著『相撲浴衣反物見本帖』。第二章では相撲浴衣反物にまつわる“おすもう人”を紹介しています。

今回は、その中から浴衣をデザインする人・染める人をピックアップしてご紹介。本では掲載しきれなかった写真とともに、詳しくお届けします!

取材にご協力いただいたのは、東京・大阪と並ぶ浴衣の産地、浜松にある産元商社の榎本株式会社さんと、同じく浜松の二橋染工場さん。

どちらも創業は昭和初期。伝統技法を今に伝えています。

相撲の浴衣反物ができるまでの工程を、桐山親方(元関脇宝富士)が引退相撲用に制作した浴衣とおそろいの手ぬぐいができるまでの工程を例に見ていきましょう。

 

①デザインを決める

デザインは力士や部屋の師匠がアイデアを出したり、おかみさん、後援者、元力士、部屋関係者の知り合いのデザイナーに託す、業者に丸投げなど、さまざま。

榎本(株)で企画・デザインを担当する和田尚子さん(左)によると、力士や親方から相談を受けた場合、出身地やゆかりのものなどをリサーチしてデザインを提案するのだとか。

デザインは何度かやりとりを繰り返し、色違いで候補を出してみたり、細かい修正が入ることもあるのだそう。

 

『相撲浴衣反物見本帖』でご紹介している狼雅関の反物も和田さんが携わったもののひとつで、本書にもあるように、本来はもっと精密なデザインだったとか。けれども、あまりに精密なものは“染め”では再現が難しく、調整が必要だったといいます。

COCON BOOKSでは、本書の発売を記念して、著者の佐々木一郎さんの直筆名、COCON BOOKSのロゴ、本書の表紙デザインをモチーフに、榎本(株)さんと二橋染工場さんで浴衣反物と手ぬぐいを制作しましたが、「ささきいちろう」の文字も実は少し調整が必要でした。「ろ」と「う」の間が染料のにじみでつぶれてしまうかもしれないとのことで、配置を調整しています。

↑最終のデザインデータ

 

②型彫り

デザインが決定すれば、染めにつかう型を、専門の型彫り業者に発注します。

1度作った型は保存され、追加で染める場合は同じ型を使うことができます。

榎本(株)さんには創業以来1,000枚の型が保存されているとか。

*相撲の浴衣反物以外も含みます。

 

③染め

大きく分けて、注染(ちゅうせん)と捺染(なっせん)の2つの技法があります。

注染はいわゆる本染めで、染料をやかんで生地に“注ぎ”ながら染めるから“注染”。職人の手仕事によるもので、生地の糸一本一本まで染まるため裏まで染まり、繊細なぼかしなど唯一無二の仕上がりに。肌馴染みがよいのも特徴です。

捺染はプリントの手法で、捺染の中にも手捺染と機械捺染、また型を使うか使わないかでも分類され、型を使うフラットスクリーンやローラー捺染、型を使わないインクジェットなどがあります。

桐山親方の場合、浴衣反物は捺染、手ぬぐいは注染で染めることとなりました。

 

[注染]

①板場(いたば)/糊置き

白生地に型をおき、海藻などで作った防染糊をヘラでのせていきます。糊を引いたら生地を折り返しながら糊を引いていくため、型紙の幅(90㎝)ごとに柄が反転します。反転した柄の入った浴衣なら、それは注染で染めたものということ。

 

②紺屋(こうや)

調合した染料を60〜80度に温め、専用の薬罐(やかん)で注いで染めていきます。色を使い分ける場合は、色が混ざらないよう、防染糊を絞り出して土手を作ります。

職人さんは両手で薬缶をもって作業しますが、桐山親方の手ぬぐいの場合は1色のため2つは同じ染料。色をぼかす場合は、1つは水で、この注ぎ具合で絶妙なぼかしを作っていきます。まさに職人技。

 

③水元(みずもと)/水洗い

染めた生地は、工場の中を流れる人工の川で洗って防染糊を落とします。染めに大量の水が必要とされるのはこのため。浜松には天竜川や馬込川のほか、豊富な地下水もあったことが、染めの産地となったゆえん。

 

④高干し

最後に天井高くに渡された丸太にかけて天日に干し、乾燥させます。浜松の空っ風がこの工程には欠かせません。水元の職人さんが丸太一本の上を歩きながら干していきます。高さ約7m。これもまた職人芸。夏なら30分、冬は2時間程度で乾くそう。

風にはためく反物は壮観です。

 

このあと、浴衣生地の場合は糊を付け、手ぬぐいはカットされて完成となります。

 

[捺染](ローラー捺染)

捺染にもさまざまな手法がありますが、桐山親方の浴衣はローラー捺染を採用。金属製のローラー型に糊をふくませ、くるくると回りながら染料をつけてプリント(捺染)します。

機械によるプリントですが、ローラーの余分な糊の見極めや型を合わせる手動ギアの調整など、熟練の技が必要となる手法。

中央にあるのがローラー型。白生地が巨大なローラーで送られ、高速でのプリントが可能。

[取材協力]
浜松といえば、東京・大阪と並ぶ浴衣の三大産地のひとつ。遠州灘に注ぐ天竜川や地下水といった豊富な水、浜松名物からっ風、日本屈指の日照時間と、染めに必要な3条件を満たすこの地で、100年近くにわたって伝統を伝える2社にご協力いただきました。

 

榎本株式会社 https://www.enomoto-hamamatu.co.jp/

昭和9年創業、着物や浴衣をはじめ和装小物やインテリアファブリックなども幅広く手掛ける産元商社。相撲の浴衣も数多く手がけ、『相撲浴衣反物見本帖』で紹介しているものでは、音羽山部屋、中村部屋、嘉陽関、狼雅関など。

常務取締役の天野統啓さん(左)と企画室の和田尚子さん

 

二橋染工場 https://www.nihashi-tinta.co.jp/

昭和2年に浜松で初代が独立創業。今で3代目。注染と捺染に幅広く対応し、工場見学を受け入れたり、注染染め体験を実施したりと、伝統技法の普及にも努める。オリジナル手ぬぐいの注文も受け付けている。

注染染め担当の二橋智浩さん

 

『相撲浴衣反物見本帖』では、第一章で71点の力士・部屋の浴衣図案をその裏に隠されたエピソードとともに紹介。第二章では、相撲浴衣反物にまつわることと題し、榎本株式会社・二橋染工場さんをはじめ、浴衣反物をコーディネートする人、仕立てる人、集める人を取材・紹介しています。

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News!!

榎本株式会社と二橋染工場のタッグで『相撲浴衣反物見本帖』出版記念オリジナル浴衣反物と手ぬぐいを製作しました。

著者・佐々木一郎さん手書きによる「ささきいちろう」の文字、COCON BOOKSのロゴ、本書の表紙モチーフをあしらった注染染めです。

なんと、数量限定非売品のこちらをゲットできるチャンス!

[手ぬぐいがもれなくもらえる]
おすもうさん公式オンラインショップで『相撲浴衣反物見本帖』を含め3,000円以上お買い上げいただくと、手ぬぐいをプレゼント。数量限定、無くなり次第プレゼントは終了。オンラインショップを見る

 

photo/Kaori MURAO(捺染を除く)

 

 

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