元相撲デスクでおなじみの日刊スポーツ・佐々木一郎さん②

おすもうに携わる「おすもう人」に迫るこのコーナー。前回に引き続き、「元相撲デスク」のツイッター名でおなじみの、日刊スポーツ・佐々木一郎さんに相撲記者としてのモットーやこだわりを伺いました!

佐々木一郎 ささき・いちろう
日刊スポーツ新聞社 編集局 東京五輪パラリンピック・スポーツ部 次長
サッカー、オリンピック、大相撲担当記者を経て、現在は大相撲などのデスク担当に。「月刊相撲」(ベースボール・マガジン社)で連載中の「稽古場物語」では、自身の筆による相撲部屋の俯瞰イラストが大好評。ツイッター@Ichiro_SUMO

力士との会話のきっかけづくりでもある「夏の絵日記」

――日刊スポーツの相撲記事といえば、夏の絵日記ですね。

おかげさまで今年で3年目になりました。読者の方に、おすもうさんってこんな面もあるんだと楽しんでいただくと同時に、実は裏事情的なことをいうと、巡業ってなかなか本場所中と違って記事になりにくいんですよ(笑)。だから、何かプラスアルファのことをしたらどうかと思って始めたんです。

――佐々木さんのご発案なんですか?

そうですね。今では僕はもう現場に出ることはあまりありませんが、新人の記者なんかはまだ顔がうれてないから、力士とのコミュニケーションの取り方がわからなかったりするんです。そんなときに「絵を描いてもらえませんか?」というのは力士と話をするいいきっかけになるんです。描いてもらっているときに雑談もするでしょうから、そこでネタを拾えたり……という側面もあります。まぁ、読む人には関係ないんですけどね(笑)。

――では、あれは現場の記者さんがその場でお願いして、その場で描いてもらうんですか?

はい。その場ですぐ描いてくれる人もいれば、一日二日考えさせてっていう人もいます。やりたくないって人もいるし。それぞれです。でも3年目ともなると、おすもうさんもわかってくれているんで、上手い下手じゃなく、おもしろがって抵抗感なくやってくれていますね

――絵だけじゃなくて、その絵にまつわる記事も興味深いですね。

プラスアルファのことを聞いて、文字を書くのが記者の仕事ですから。ただなんか面白い話ありませんか?って聞いたところで、意外な話が聞けるわけではありませんが、絵があると、そこから面白い話が飛び出したりもします。

あと、巡業は本場所に向けての準備という一面もあります。本場所になると、取組から支度部屋に戻って髷を結ってる3~4分くらいしか話を聞けないんです。全力で相撲とってきて、まだはぁはぁいってる横で、「小さいころはどんな子どもでしたか?」とか、聞けないじゃないですか(笑)。だから、そういうのは巡業のときにある程度仕込んでおいて、その力士がすごく大きな記事になるときに、その話を披露できればいいなというような感じですね。

――ストックですね。

そんな狙いもありますね。

各紙カラーが発揮される本場所3~5日目の記事に注目!

――本場所中の誌面づくりで日刊スポーツさんの特徴はありますか?

お相撲に限っていうと、本場所中は「記者席から」というコーナーがあることですね。40行くらいのコラムなんですが、日々の勝った負けたと関係なく、読んでもらいたい話題を15日間毎日載せています。これは他の新聞にはないもので、たった40行と思われるかもしれませんが、スポーツ紙でそのスペースをさくのって意外と貴重なんですよ。なので、ここはぜひ読んでもらいたいところですね。あとは日々どの力士を取り上げるかは、いろいろ考えながらやっています。優勝した瞬間や大関昇進が決まった日はその人の記事を書くのは当然なんですが、そうじゃない日は、各紙読み比べてみると色が出ますよね。やっぱり各紙信念をもってやっているので、そこは見てもらえるとうれしいです。

――日刊スポーツの場合、取り上げる力士のポイントはどんなところですか?

本場所の序盤だと勝ってる人や、その場所で記録達成がかかってる人とかですね。終盤だと優勝争いに絡んでいる力士。当たり前ですが……。

面白いのは3、4、5日目あたり。この辺はどの力士を取り上げてもいいんです。この時期って、特に優勝が決まるわけじゃないし、昇進した人が白星発進したとかって話題もない。読ませたい記事が書けるのはこの3~5日目あたりなんです。例えば、日々の取材のなかでこれは紹介したいという話があった場合、その人が勝てばそれを出しましょう、という逆算的なケースもありますね。それと、アドリブもあります。その日とんでもなくすごい相撲が出たとか、支度部屋でこんな面白い話があったとか。それに敏感に反応するようにしています。

大相撲総選挙に見る強さだけではない力士の人

――「夏の絵日記」、「記者席から」と並んで日刊スポーツ名物といえば「大相撲総選挙」ですが、これも佐々木さんのご発案なんですよね?

そうなんです。今年で6回目ですが、始めた当時はまだ現場の記者で、デスクにこんな企画やりたいってもって行って。認知度なんてぜんぜんありませんでしたから、結果発表も今でこそカラー面ですが、当時はたったの30行……。まぁ、AKBの総選挙も最初は3行とかの扱いでしたから……。おかげさまで、うまく軌道に乗りまして、この総選挙の結果が、先ほどの誰を取り上げるかというのに一役買っています。一応商業誌なので、読者のニーズも考えないといけない。番付とは関係なく人気のある力士の記事って、みなさん読みたいんです。

――稀勢の里関がずーっと1位(6年連続1位)ですよね。

だから極端な話、毎日稀勢の里でもいいんですよ。若貴全盛期は、毎日1面が若乃花か貴乃花だったんです。どっちかだけで15日ぶっとおしでいく時代があったんです。それこそニーズかなと思います。でも、そこの兼ね合いは難しくて、ニーズばかりに寄るのもよくないし、いい話があれば取り上げたいし……。これまた正解がないんです。臨機応変に対応するというところですね。毎日そんなことを考えながら、現場と話しつつ、今日はこの人のことを書こうかって決めたりしてますね。

ただ、人間的に魅力的な人だったり、所作がきれいな人とかは人気ありますよね。そこは強い弱いだけじゃないところを相撲ファンは見ているし、人気の根っことなるものがあるんだなと思います。強ければいいわけじゃないっていうのは、我々も意識しておきたいところですね。

――ちなみに、大相撲総選挙のキャッチコピーがかなりセンスいいんですが、これは誰が?

僕が(笑)。けっこう悩むんですよ。最近は現場に出ていないんで、新しい力士がわからないんです。そういうときは、ちょっと現場の記者に聞いたりして……。

――いじり具合が絶妙ですよね。

さじ加減がね……難しいです(汗)。

――佐々木さんがひそかに応援していらっしゃる力士はいますか?

個人的にがんばってほしいのは、大鵬さんのお孫さん。九州場所が初土俵です。実は、大鵬さんにはとてもお世話になったんです。大鵬さんは日刊スポーツの評論家をやっていただいてまして、私が担当させていただいていました。取組が終わったらお電話して、今日の相撲について話を聞いて記事にさせていただいていました。亡くなる前日まで話を聞いていたんです。そういった思い出もあるので、その血を継いだ人が角界に入ってくるのは感慨深いですし、また違った目で応援していきたいと思ってます。やっぱりドラマがありますからね。家庭環境ならではの苦しさや辛さもあるでしょうし、体格的に恵まれてるからいいだろっていうわけでもないし。これから番付が上がっていけば、その辺の話も紹介していけますから楽しみですね。

 

――最後に記事を書くうえで気をつけていらっしゃることはありますか?

スポーツ新聞で難しいのは、相撲好きだけが見ているわけじゃない。野球を読みたい人も見るかもしれません。稀勢の里関が優勝すれば1面になるでしょうから、普段相撲を知らない人も読む可能性が高い。だから、そういう人のためにわかりやすく書かないといけない。かといって、相撲にすごく興味があって、ちょっと突っ込んだとこを知りたい人に物足りないと感じさせてはいけない。そこのさじ加減は気をつけないと、と思います。専門用語の連発ではよくないですが、日々相撲を見てよく知っている人でも、あ、こんなこと知らなかったっていうところを、1~2カ所は入れたいなって。へーと思わせるところは入れたいと思っています。そこのバランスには気をつけていますね。スポーツの専門新聞だけど、相撲専門紙ではないし、バラエティ番組でもないし。どこを向いて書くかは正解がないところです。迷ってもしょうがないので、そこはこうじゃないかという信念を貫くしかないですね。

ひと口にスポーツ新聞といっても各紙カラーはさまざま。日刊スポーツ新聞ならではの特徴や、佐々木さんの記者としての信念やアイデアマンぶりをお伺いできました!「記者席から」は日刊スポーツ新聞ウエブ版にて「大相撲裏話」としてバックナンバーも読むことができます。

つづく……

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