西岩部屋特集も今回で最後。最終回は、西岩部屋のある“浅草”がテーマです。東京一の観光地である浅草は雷門からも近い好立地。稽古見学には外国の方も多く訪れています。そして、意外なことにこのエリアの相撲部屋は西岩部屋のみなのだそう。
弟子と一緒に浅草のことを勉強中!
―今回はこの西岩部屋のある“浅草”について。もともとゆかりのある土地だったんですか?
西岩親方:一切ないです。でも、偶然なんですが、初代若乃花の花田勝治さんのお墓がすぐ近くにあるんです。先日みんなでお墓参りに行ってきました。「お前たちの四股名の“若”は、この初代若乃花の“若”を継いでるんだよ」って。
―土俵の鬼ですね。
西岩親方:僕にはやさしかったんですよ。地元が一緒で、小学校も一緒。同じ町内なんです。実はお墓も花田家と古川家(親方の本名は古川)は向かい合って建ってるんです。小学校の体育館には若乃花さんの優勝額が飾ってありましたし。
―交流はあったんですか?
西岩親方:もう定年退職されて、相撲博物館の館長をされているときに、地元が同じということで呼ばれて行ったことがあります。鳴戸親方に報告すると、親方は若乃花さんの直の弟子なんで「本当か!」って、親方の方が緊張しちゃって、おかみさんを伊勢丹に走らせてね、お土産をいっぱい持たされました。私は孫弟子なので、そこまでの緊張はなかったんですが、親方には失礼のないようになって念押しされました。
―どんな方でした?
西岩親方:すごくお酒が強かったです。日本酒をチューハイを飲むようなグラスで飲まれていて。日本酒って普通小さいグラスですよね?
―っていうか、おちょこですね。
西岩親方:でもグラスでぐいぐい。もう70歳くらいでいらしたと思うんですが、強いな~って思いましたね。
―ほー。でもやっぱりご縁があったんでしょうね。この地域の印象はどうですか?
西岩親方:下町ですし、三社祭のときなんかは浅草でも一番賑やかで、おみこしを担いで練り歩くんですが、この寿4丁目の団結力を感じました。西岩部屋もここへ来たからには、地域のみなさんに愛されるような部屋になっていきたいですね。
―三社祭といえば5月ですから、ちょうど部屋ができたての頃だったんですね。
西岩親方:そうです。お祭りはちょうど五月場所の中日で、部屋の前をおみこしが通ったんです。みんなで外へ出てみましたよ。
おかみさん:浴衣に着替えてね。すごい迫力でした。
西岩親方:このあたりはおいしい食べ物屋さんとか、老舗といわれるお店もいっぱいあるんです。いろんな人に声をかけていただきますし、浅草に来てよかったと思います。
―駅からのアクセスもいいですよね。
西岩親方:はい。あとね、昔はあったみたいなんですが、今、浅草には他に相撲部屋がないんです。川を渡ったら両国だし、隣の町内は蔵前で、昔国技館があった場所。これだけ相撲になじみがあるのに相撲部屋がないという状況で、私がここに来たことをすごく喜んでいただいているという声も聞きます。
―あと、観光地ですから海外の方も多いですね。
西岩親方:多いですよ。さっきも英語で電話がかかってきました。
おかみさん:ちょちょちょちょ……って感じでした(笑)。恐れていたことがついに来てしまった……という感じです。
―それは見学したいってことで?
おかみさん:そうでした。多分、今度はいつ稽古がありますかって聞かれてたと思うんですが、それを伝えるのが大変で……。
西岩親方:トゥモローどうたらこうたらって言ってたね(笑)。
おかみさん:そう。トゥモローノートレーニングって(笑)
一同爆笑
西岩親方:家内が必死で電話対応してるんです。ディッセンバーなんとかって言って(笑)
おかみさん:今日のところはなんとか事なきを得ましたけど、今後は張り紙も英語表記があったほうがいいのかな、、、、とか考えますね。
西岩親方:観光地なんでね。力士にも浅草を覚えてもらわないといけないので、浅草名物を食べさせたりしてます。
亀十のどら焼はあずきあんとしろあんの2種類。皮がパンケーキのようでふかふか。松風は黒糖をつかった生地であんこを包んだお菓子。
―浅草名物といえば、内海桂子師匠の好物のあれですね!
西岩親方:そうそう。亀十の松風ね。
おかみさん:どら焼きも有名です。大きいんですよ。
西岩親方:この間ね、若中谷が福岡出身なんですが、九州場所で地元へ帰るのでお土産に浅草名物を買って帰ったらどうだっていって。誰もが浅草土産だってわかるものといえば雷おこしじゃないかって教えたんです。
おかみさん:お店の場所と商品名と値段まで書いて渡したんです。でも……
西岩親方:次の日に何買ったか聞いたら、人形焼き買いましたって(笑)
―(ズコっ)そこまで言っておいたのに!
おかみさん:私、若中谷に聞いたんです。親方が人形焼買って来たって聞いて笑ってらっしゃいましたよって。そしたらすごく小さな声で、申し訳なさそうに「あ・・・そうなんです・・・・・・。親が・・・・人形焼食べたいって・・・・」って。
西岩親方:ははははははは!!!
―親御さんが人形焼食べたいっておっしゃったんならしょうがないですね。
西岩親方:あとね、志乃多寿司って、いなり寿司とかんぴょう巻しかないお寿司屋さんなんですが、浅草の人に愛されてる名物のお寿司屋さんで。それとペリカンのパンね。
―ペリカン、予約してきました!前回来たときに寄ったら買えなかったんで。
おかみさん:ペリカンカフェっていうのもできたんですよ。
―そこも前回行ったら、すっごい並んでいて入れませんでした……。
西岩親方:さすが! よくご存知ですね。あと、ごま油。ペリカンのすぐ近くで、部屋からもすぐです。香りが全然違って、これを食べたら他のは使えません。
おかみさん:お豆腐にたらしたり、トーストにつけてもおいしいですよ。
実際に家に帰ってやってみました!「まさじろうさんの純正ごま油」(磯村政次郎商店)をかけたペリカントースト! 香ばしくて、とてもおいしかったです~。
西岩親方はすっかり浅草の宣伝部長ですね。そのうち西岩部屋も浅草の名所になりますよ!
親方&おかみさんおすすめの浅草おいしいもんマップを作りました。ぜひ稽古見学がてらぶらりしてみてはいかがでしょうか。
photo/Tomoko HANAI(食べ物以外)
西岩部屋
東京都台東区寿4-4-9
稽古見学は自由(8:30~10:30頃)
詳細・お問合せはHPより
西岩 忍(にしいわ・しのぶ)
本名・古川 忍(こがわ・しのぶ)
昭和51年7月10日生まれ、かに座、O型、青森県弘前市出身。
弘前市立第二中学校卒業後の平成4年、元・隆の里の鳴戸部屋に入門。「古川」のしこ名で同年三月場所で初土俵。平成9年十一月場所の十両昇進を機に「若の里」に改名。平成10年五月場所で新入幕を果たす。同場所で敢闘賞を受賞し、平成13年一月場所で関脇に昇進。平成27年九月場所で引退、年寄「西岩」を襲名し、田子ノ浦部屋の部屋付き親方として後進の指導にあたり、平成30年2月1日付けで独立、「西岩部屋」を開く。
プライベートでは、平成16年に結婚、引退後にスイスへ新婚旅行。平成29年に第一子が誕生。