最高位・東幕下22枚目ながら、史上最高齢での幕下昇進、30歳以上での幕下昇進場所では初の勝ち越し力士という記録を打ち立てた元伊勢ヶ濱部屋所属の力士・駿馬赤兎さん。令和元年五月場所での引退を記念して、おすもうさんでは駿馬さんの相撲人生を振り返るインタビューを決行! 知られざる駿馬赤兎一代記最終回では、引退にいたる心境、その後の第2の人生についてのお話のほか、なんと重大発表も!! 駿馬さんからの素敵なプレゼントのお知らせもお見逃しなく!
幕下の自己最高位で感じた力の差
―今年(2019)の五月場所で引退をされたわけですが、引退を決意するきっかけはなんだったんでしょうか?
2017年の自己最高位(幕下22)のとき1勝6敗で、力の差を感じました。当たる相手も元関取が多かったり。ここで力の差を感じて、はたして関取までいくのにどれだけかかるかって考えました。今からがんばって徐々に番付を上げたとしても、40歳を超えて最大のパフォーマンスが出るのか……と。これが、自分の実力じゃないか、限界じゃないかと思ったんですね。
―親方に引退の話をされたのはいつごろなのでしょうか?
2017年五月が最高位で負け越したんですが次の名古屋もまだ幕下に残れたんです。でも、次に三段目に落ちて負け越したら引退しようと決めていたんです。九月場所は三段目に落ちましたが勝ち越して、次の九州場所で負け越して、そこで親方に話をしました。
―親方はなんと?
もう少しがんばれと……。
―そこから引退までけっこうありましたよね?
はい。ただ、一度「引退」という言葉を口に出してしまうと、体もそっちに向いてしまうんです。
―心の張りがね……(「心の張りは体の張り」その②参照)。
気持ちがないから、そこからほとんど負け越してました。目標もないし、なんのためにやってるのかわからなくなって……。土俵に上がると真剣にとるんですが……。つらかったのは、応援して下さる方に「がんばってください」って言われて「ありがとうございます」って言いながら、自分は引退するんだっていう気持ちのすれ違いですね。
―きついですね。
はい。親方に引退を止められて、自分ではあと半年がんばろうって決めて。2018年の名古屋場所が終わったときにもう一度親方と話しました。一応引退はわかったということで、いつするかということになりまして、1月にしたいとお願いしたんですが、1月はすでに伊勢ノ花(いせのはな)さんの引退が決まってたんです。
―一度に二人はだめなんですか?
そうですね。同時は難しいですね。それで少し伸びまして、五月場所となりました。
―でも結局三月と五月は休場となってしまったから、現役最後の相撲をとり終えて花道で花束っていうのができませんでしたね。
そうですね。でも、初場所の最後の日は彼女と彼女のご両親を升席に招待していたので、一応見届けてもらいました。
―そうですか。ん? あれ? 彼女!?
あ、そうです(照)。
―あら! もしかしてご結婚!?
年末に。
―おめでとうございます!!!!!
引退するから結婚というわけではなく、偶然なんですが……。
プロポーズは令和元年五月場所中、その言葉は……
―馴れ初めをお聞きしてもいいでしょうか?
知り合いを介した食事会で。彼女はレビューダンサーで、踊りをやってるんですがその仲間が5名と相撲取り5名と紹介してくれた知り合いが5名。
―それはいつごろ?
4年くらい前ですね。
―彼女のどういうところに魅かれて?
食事会で隣に座ったんですが、言葉遣いがとてもきれいだったんですね。こういう話し方をされる人がいるんだって思って、そこからちょっと会おうかという話になりました。
―その場で連絡先交換されたんですか?
はい。ラインいいですかって聞いたら、ガラケーでした(笑)。
―古風!
それで電話番号を聞いて、でもお付き合いするまでに半年くらいかかりました。2月に知り合って、すぐに私が大阪に行っちゃって、帰ってきて5月に1回会いましたが、照ノ富士の大関昇進やらでなかなか会えなくて……。
―結婚の決め手は?
次にお付き合いする方と結婚しようと決めてまして。お付き合いしてみても、やっぱりこの人だなって。私はまわりからしっかり者だって言われるんですが、自分ではそう思ってなくて、彼女は自分のことを注意してくれるようなしっかり者だったので。
―プロポーズはいつ?
今年の五月場所中です。断髪の前の日に両家顔合わせの食事会を予定していたので、その前にプロポーズしなきゃって思ってて。
―どこで?
銀座のフレンチで。
―すてき!
けっこう奮発しました(笑)。
―で、プロポーズの言葉は?
「結婚お願いします」って言ったら、「お願いします?」って言われて、「あ、結婚してください」って言い直しました。
―きゃー。正統派!
クーラーががんがんにきいていたのに、汗がすごかったです(笑)。
―でも、まさに新しい人生のスタートですね! 新しいお仕事ですが、間垣部屋の兄弟子・元若天狼(わかてんろう)さんの会社に就職されたんですね。
はい。相撲に何かしら関われる仕事をしたいと思っていまして。若天狼さんが立ち上げたシリウス*という会社で、デイサービス事業で働きながら、力士セカンドキャリア推進協会という部署にも携わることになります。
*株式会社シリウス https://www.sirius-net.jp/
―デイサービスで働いておられるのって元力士の方ばかり?
そうなんです。介護のお仕事はけっこう大変だと聞いていたんですが、私は楽しくやらせていただいています。
―ご年配の方はお相撲好きな方も多いですし、すごくいいと思います!
安心感もあると思います。
―そうですね。もうひとつの力士セカンドキャリア推進協会というのはどういうところなんでしょう?
社団法人として引退する力士に仕事を紹介したり、力士の一般社会での生活をサポートする団体です。
―中学卒業してすぐ入門される方もいらっしゃいますもんね。
相撲とりと一般の方では生活の違いもあったりしますし、そういうことを教えていったりと、そこで何かしら相撲に携われれば大相撲の底辺の拡大にもつながるかなと思いまして。
―なるほど。第2の人生もやはり相撲との接点を大切にされたいという駿馬さんにとって、大相撲とは?
自分の人生経験の大半を費やしたものなので、自分の人生がまるっと入ってる。入門が生まれたときとすれば、引退が死んだときで、人生そのものかなと思います。入ったときは右も左もわからず、どんどん理解していって、最後は自分の判断で引退と。はい。まさに人生ですね。
―素晴らしい相撲人生だったと思います! これからもご活躍を期待しております。
駿馬さん一口メモ
―犬派?猫派?
猫です。飼ってはいなかったんですが、ばあちゃんが野良猫にエサをあげてて、そしたら5~6匹集まってきて、ある日子ねずみをくわえて置いていきました。あれはお礼なんでしょうか?
―好きな色は?
黄色。
―そういえば下がりも黄色でした!
―相撲以外で好きなスポーツは?
格闘技が好きです。プライドとかK1とか昔はよく見ていました。
―好きなアスリートは?
うーーーーん……。ちょっと前までは照ノ富士って答えてました(笑)。
―嫌いな食べ物は?
ないです。
―好きな食べ物は?
チャーハン。
―好きな芸能人は?
大江麻理子さん(テレビ東京キャスター)とか、麻生久美子さん。
―レジ(喫茶ミカドの)のところに大江さんのサイン色紙貼ってありましたね。
えーーー!ぜんぜん知りませんでした!
―好評だった手料理は?
部屋に鮮度のいい鶏肉を差し入れしていただくことがあったんですが、それをさばいてタタキにしたのは好評でした。半生でにんにく、大葉、玉ねぎ、みょうがをかけてぽん酢で。その鶏のガラを5羽分丸ごと煮込んでスープをとった丸鶏のラーメンはめちゃくちゃおいしかったです。部屋のみんなも絶賛してくれました。
―豪快! 鶏が丸ごと差し入れられるなんて相撲部屋ならではですね!
駿馬赤兎(しゅんば・せきと)
本名は中板秀二(なかいた・しゅうじ)、昭和56年12月18日生まれ、石川県珠洲市出身。平成16年1月に間垣部屋に入門、同年三月場所で初土俵。平成25年三月場所後に部屋の閉鎖に伴い伊勢ヶ濱部屋へ移籍。平成29年三月場所、史上最高齢で幕下昇進、6勝1敗の好成績で、30歳以上で幕下昇進を果たした力士で唯一同場所にて勝ち越しを決める。令和元年五月場所で引退。
駿馬さんから素敵なプレゼント!
ご応募を締め切りました。たくさんのご応募ありがとうございました。
開荷風ティッシュケース 2名様
サイドにそれぞれ「駿馬」「赤兎」の四股名が入ったティッシュケース。(ティッシュは付いていません)
駿馬さんプリントハンドタオル 2名様
凛々しい立ち合いのシーンがプリントされたハンドタオル。
<ご応募方法>
件名を「駿馬さんプレゼント希望」としていただき、お名前、メールアドレス、希望商品名、「おすもうさん」サイトでおもしろかった記事を3つご明記のうえ、info@osumo3.comまでご応募ください。締め切りは2019年8月31日まで! 応募者多数の場合は厳正なる抽選のうえ、ご当選者のみメールにてご連絡いたします。
*お預かりした個人情報は、適切に管理し、プレゼントの発送やサイト制作の参考にさせていただく以外の目的で使用いたしません。
撮影協力
喫茶ミカド
東京都墨田区江東橋3-6-10
伊勢ヶ濱部屋のすぐ近くにある駿馬さんはじめおすもうさん行きつけの喫茶店。手づくりのフードメニューも人気でランチタイムは満席に。駿馬さんはいつもアイスコーヒーを飲んでからごはんのパターンが多いそう。ランチタイムは料理にサラダ、みそ汁、飲み物がセットに。
Photo:村尾香織